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現場のコンプライアンス実態調査の進め方(クリックして開く)

アジェンダ

はじめに

今年は、粉飾決算やデータ偽装、欠陥の隠ぺいなど、大手企業の企業不祥事が相次いでいます。

こうした背景もあって先般、某顧客企業様(上場企業)からご依頼をいただき、
共同で「現場のコンプライアンス実態を調査する為の調査票」を策定しました。

そこで、当コラムでは、主に先般のご支援を通じて得られた知見などを基に、
企業が現場のコンプライアンス実態を調査する為のポイントをまとめ、解説しています。

1.なぜ、企業不祥事が繰り返されるのか?

表)企業で不祥事が繰り返される原因
出所)「企業の社会的責任に関する経営者調査」(経済同友会2008)の調査結果を元に当社で作成

上の表は、経済同友会が実施した「企業の社会的責任に関する経営者調査」の中で、
企業で不祥事が繰り返される原因を経営者は如何に考えているのか、をまとめた調査結果です。

上記の調査結果からも明らかな通り、企業の不祥事が繰り返される原因が、「当事者・従業員にある」というより、
「経営者自身や社内体質、社内体制に問題がある」と考えている経営者が圧倒的に多い事が伺えます。

ちなみに、上位3項目には、特に以下のキーワードが含まれています。

  • 経営者
    経営者自身のコンプライアンスや内部統制に対する意識の低さ、経営者のリーダーシップの欠如、など
  • 社内体質
    暗に、不正を助長したり、ルール違反を容認する風土、営利・業績第一主義、経営者と社員のコミュニケーション不足、社内と世間(社会)との常識のズレ、など
  • 社内体制
    不正を早期発見するチェック体制の不備、統制活動を通じた相互牽制の体制の不備、子会社の放置、など

つまり、現場のコンプライアンス活動の実態を把握して不祥事の予防を目指すには、従業員の意識をやみくもに調査するのではなく、
これらのキーワードを使って現場のコンプライアンス活動の実態を把握する事が欠かせません。

【補足】社内体制における「チェック体制の不備」について…

社内ルールがないのではなく、規定されている社内ルールが「形骸化」している事に原因がある不祥事が少なくありません。

そこで、形骸化の主な原因を以下に列挙します。

  1. 時間に余裕がない
    例1)当日就業時間内に作業を完結させるために、作業報告書等の記載手続きを省略してしまう。
    例2)期末処理で期限内に締める事を優先して、確認が必要な書類をノーチェックで承認している。
  2. 油断や甘え
    例1)内容が不明なまま、成り行きで押印してしまい、最終承認者に責任を転嫁してしまう。
    例2)「過去に問題が無かったから、今回も大丈夫」といった甘い考えで、ルールを軽視してしまう。
  3. 社内ルールを知らない
    例1)本社の複数の部署が通達するルールを、各々の現場サイドで確認しきれていない。
    例2)各々の部署内部でルールの共有化が図られていない。
    例3)ルールの本意が伝わっていない。
  4. 集団浅慮、勝手な思い込み
    例1)昔からの悪慣習に疑問を感じることなく、従ってしまう。
    例2)ルールの通達を、メールや掲示板等に頼ってしまい、「対象部門で確認しているだろう」と、勝手に思い込んでしまう。(特に本社サイドの問題)

現場のコンプライアンス実態を調査する際には、これらも盛り込むべきキーワードといえます。

2.現場のコンプライアンス実態調査に取り組む為に…

次に、現場のコンプライアンス実態の調査に取り組む為のポイントを解説します。

一般的な調査でも「目的が曖昧なままで調査に取り組み、
後になって“何のための調査だったのか”が分からなくなってしまう」ケースが散見されます。

従って、こうした「調査の為の調査」に陥らない様にするには、
必要なキーワードを盛り込んで拙速に調査票を作成するのではなく、
先ず始めに調査目的と、目的を達成する為に調査結果に求められる要件を整理し、
次いで、調査スキームを明確にする事が特に重要です。

調査目的の例

【調査目的の例】
調査を通じて、不祥事リスクをマネジメントする為のPDCAサイクルを円滑に推進する具体的には…

  • 対策を講じる際の優先順位をつけられること
  • 具体的な目標立案に活用できること
  • それぞれの現場にとって、取り組みの動機づけとなること
  • 投資の判断材料として活用でき、かつ、講じた対策の効果を計測できること

【調査結果に求められる要件の例】

  • 調査結果が、回答者の主観に左右されず、実態を反映していること
  • 繰り返し調査を行うことで、過去との比較検証ができること
  • 全体評価のみならず、特定のリスク事象や各現場評価にも活用できること、など

こうした検討を経る事で、全体的な統制環境と合わせて個別に焦点をあてるリスク事象や、調査の方法、調査の対象者などの調査スキームを明確にする事ができます。

3.調査項目を検討する為のポイント

最後に、決定した調査スキームに沿って調査項目を具体的に検討する際のポイントを解説します。

繰り返しになりますが、やみくもに従業員のコンプライアンス意識を調査しても、現場のコンプライアンスの実態は把握できません。

むしろ、1章でまとめたキーワードを踏襲しながら、個人の意識と現場(組織)の行動の双方に焦点をあてた調査が欠かせません。

そこで、先の顧客企業様との共同作業を通じて、当社は下記に図示したフレームワークを定義しました。

図)現場のコンプライアンス実態を調査する為の当社フレームワーク
◎:ほぼ全ての質問項目を検討する時に着目する
△:いくつかの質問項目を検討する時に着目する

このフレームワークに沿って調査項目(質問項目)を検討する事で、
先述のキーワードを網羅的にカバーした実態調査が可能になる、と当社では考えています。

更に、検討した各々の調査項目について、以下を決定する事で始めて調査に着手する事ができます。

  • 調査方法の設定
    調査項目毎に、アンケートや個別ヒアリング、グループ討議などの複数の調査方法を検討します。
    この際、それぞれの調査方法の特徴や留意点を踏まえて検討する事が必要です。
  • 調査対象者の設定
    調査方法の検討と同様、調査項目毎に、特定の部門への絞り込みや、部門の責任者、一般社員、派遣社員など等の調査対象者を検討します。
    但し、セグメント間のギャップ等を比較検証できる様に、出来るだけ全員に同じ項目を調査する事を基本とし、対象者の絞り込みは特定の調査項目に限る様、注意する必要があります。
    (例:上司の平素の行動や言動を質問する場合など)

こうした過程を経て、実効性のある調査を行う事が、現場のコンプライアンス実態の的確な把握を可能とし、
ひいては、PDCAサイクルの円滑な推進につながる、と当社は考えています。

CIOパートナーズ株式会社
代表取締役 吉田明弘