CIOパートナーズ's メールマガジン vol.1
この度、当社からお客様への情報発信を強化する一環で、当社と過去に名刺交換をさせて頂いたお客様を中心にメルマガを発信する事になりました。
日頃、プロジェクトに忙殺されてしまい、せっかく、以前に名刺交換をさせて頂いたにも関わらず、その後にコミュニケーションがとれないお客様が少なくありません。そこで、少しでも何か参考になる情報をご提供して、頂いたご縁の風化を防ぐ事ができれば…と考えて、始める事になった次第です。
【CIOメルマガのコンセプト】
・発信の頻度 … 毎月1回(目安)
・主に取りあげるテーマ
1. 情報システムやDX、AIの導入と業務改善に関する内容
2. BCP/BCMの整備に関する内容
※当社が日ごろからご支援しているテーマが中心です。
・コンセプト
1. プロジェクトの取組み事例などを交える
2. 各テーマ専門部署ではなく、経営層や関係部門キーパーソン向けの内容にする
※例えば、IT関連テーマは、情報システム部門向けではなく、関連部門の皆様向けに…
ぜひ、お手すきの折にでも、ご一読いただき、ご参考にしていただければ幸いです。
1. 企業のIT動向と課題
先月、日本情報システム・ユーザー協会(一般社団法人・略称「JUAS」)が「企業IT動向調査2026(2025年度調査)」を公開しました。この調査は、東証上場企業とそれに準じる企業を対象に毎年行われ、経済産業省が報告書を監修しているものです。
【2025年度 調査概要】
回答社数 :957社
重点テーマ :人とAIで未来を創る、新時代のIT部門像
調査形式 :アンケート調査+グループインタビュー
アンケート時期 :2025年9~10月
【調査結果の概略】
※JUASが発表した報告書をもとに、本稿のテーマに沿った内容を当社で抜粋・要約
ITへの期待とIT予算
各社が、IT投資を通じて最も解決したい経営課題(主要3項目を抜粋)
1. 業務プロセスの効率化(省人化、業務コスト削減)と迅速化
2. 既存ビジネスの強化(営業力の強化、高付加価値化)
3. 新規ビジネスの創出やビジネスモデルの変革
一方で、増加傾向のIT予算を抑制する為、優先順位付けや費用対効果の確認を徹底する予算統制をこれまで以上にしっかり行う動きが各社に広まる
DX推進
DX推進が進んでいると考えている企業は年々増加傾向
その一方で、約8割の企業が人材・スキル不足をDX推進上の課題と認識そこで、少し時間(3~5年程度)をかけながら、事業部門のDX担当人材の増員を進めている企業が多い(約6割弱の企業)
システム開発
大規模なシステム開発ほど、新システムのQCDに不満がある企業が増加
(参考.1)新システムの品質に対する顧客企業の「不満」の割合 ※プロジェクト規模別
100人月未満 :8.8%
- 100~500人月規模 :26% ※2020年度以降、年々増加傾向
- 500人月以上 :29.6% ※2022年度以降は毎年、30%前後で推移
補足:1人月は概ね150~200万円以上(システム開発会社によって異なる)
(参考.2)38.6%の企業が、投資額(コスト)が「予定より超過」と回答(100人月以上の場合)
※予定以内/予定どおり/ある程度は予定どおり/予定より超過の4択から選択
(参考.3)品質不良やコスト超過の主な要因 ※( )内は選択した企業の割合
- 計画時の考慮不足 … 品質不良(48.8%) コスト超過(51.0%)
- 仕様変更の多発 … コスト超過(48.6%)
- 業務・システムの複雑さ … 品質不良(48.8%) コスト超過(51.4%)
- ベンダーのスキル不足 … 品質不良(59.9%)
- 社員のスキル不足 … 品質不良(44.8%)
こうした実態を踏まえて、今後は「内製を増やす」又は「内製と外部委託の混成体制」でシステム開発を進めたいと考える企業が過半を占める
中でも、システム企画(システム化の構想策定)を始めとする上流工程ほど、外部のITベンダーに頼らずに、企業が主体的になって取り組む体制を目指す動きが顕著
しかし、システム開発の内製化も一筋縄ではいかず、以下の課題を抱えている企業が多い
※企業の選択率の順に列挙
1. 開発人材の不足(質量とも)
2. プロジェクト・マネジメント人材の不足
3. 現行業務への理解不足
4. システム企画力不足(ビジネス要件をシステム仕様に落とせない)
生成AIの活用
生成AIは、検討段階から導入段階に進んでいる企業が急速に増加
(参考)導入が進む主な生成AIと導入率
※( )内は前年調査からの増減ポイント
- 言語系生成AI … 53.4%(+12.3pt)
- 画像・動画系生成AI … 34.2%(+12.4pt)
- コード系生成AI … 32.6%(+11.9pt)
補足:要件や仕様をインプットして、プログラム(コード)を生成するAI - その他の生成AI … 25.4%(+10.0pt)
補足:音声・音楽系生成AI、ロボット制御系生成AIなどが代表例 - AIエージェント … 21.0%
※補足:都度タスクを与えるのではなく、自律的に分析して判断するAI
データの有効活用(データドリブン経営)
先進的にデータの有効活用を進めている企業(全体の約2割程度)では、リアルタイム情報や予測結果(生成AIと分析AIを併用するケースなどがある)をもとに業務上の意思決定を行っている
リアルタイム情報や予測結果をもとに意思決定を行っている業務
※企業の選択率の順に列挙(上位3業務のみ抜粋)
1. 営業
2. 生産
3. 経営企画
各社が考える「データ活用の課題」
※企業の選択率の順に列挙(上位3業務のみ抜粋)
1. データ活用に関する人材不足 …特に、量的不足より質的不足を課題視する企業が多い
2. データ活用の意義やルールが不十分 …特に、データ活用が進んでいない企業で顕著
3. データの質が不十分
今回の調査結果から、従来型システム開発、DX、AIとデータ活用のそれぞれのテーマに共通して、『社内のデジタル人材の課題』が、浮き彫りになっている事が読み取れます。そこで、次章では「デジタル人材とは何か…」「社内のデジタル人材には、どういった役割が求められているのか…」をまとめます。
※なお、今回引用した「企業IT動向調査2026 報告書」では、JUASから包括的な総括と提言がなされています。ご興味のある方は是非一度、確認してみてください。
2.社内のデジタル人材の役割
前章では、『社内のデジタル人材』の充実が重要なIT経営課題になってきている事を、『企業IT動向調査2026 報告書』(JUAS)を通じてまとめました。そこで、本章ではデジタル人材の定義と担うべき役割をまとめます。
【デジタル人材とは…】
経済産業省は、デジタル人材を「デジタル技術を活用して企業や社会に新しい価値を創造する人材。具体的には、AI、ビッグデータ、IoTなどのデジタル技術を理解し、活用できる人材」と定義しています。
このデジタル人材には、IT技術者や企業のIT部門の人材にとどまらず、マーケティングや営業、生産管理など非IT部門で事業活動を担う幅広い職種の人材が含まれています。
【社内のデジタル人材の役割】
社内(特に社内各部署)のデジタル人材には、それぞれの所属部門内にあって、業務のDX化の推進や、DXの「自分ごと化」意識を醸成する為のロールモデルとして、更にはDXリスクの部門管理者としての役割が期待されています。
業務DX化の推進
それぞれの所属部門の中で、デジタル技術を活用して業務プロセスの効率化や迅速化、業務品質の向上を進める活動の中心メンバーとして、チームを牽引する事が期待されています。
(デジタル人材の主な役割)
・デジタル技術の動向や他社事例と自部門の現状を踏まえた改善テーマの提案
・To-BeビジネスモデルやTo-Be業務プロセスの設計
・To-Beモデルに必要なデータの見極め
・データの安全性・信頼性の確保、データを継続的に集める仕組みの構築
・利用するデジタル技術の検討と設計、実装、運用
・プロトタイプの試行と検証
・関係者への利活用の促進、など
こうして業務DX化の取組み内容を並べると、主たる課題解決の手段こそデジタル技術に置き換わっていますが、活動そのものは多くの企業が部門ごとに地道に取り組んできたQCサークル活動や業務カイゼン活動と共通点が多く、既視感のある活動である事がよく分かります。
つまり、社内各部署で推進する業務DX化とは、特定のデジタル人材が取組みを背負うではなく、関係者を巻き込みながらチームで推進する活動です。従って、デジタル人材には、チームを牽引するリーダーシップやコミュニケーション能力が求められている、といえます。
DXを自分ごと化する為のロールモデル ~ DXを『自分ごと化』する為の意識改革を率先 ~
デジタル技術を、Excelやメールと同じ様に、多くの社員が当たり前に使いこなせる時代が到来しつつあります。大手企業の中には、時代の変化を見据えて社員のデジタル人材化を急ぐ企業が少なくありません。一方で、「DXは自分には関係ない。一部のスペシャリストが理解していれば良い専門領域」と割り切っている社員が大勢を占める企業も未だ少なくありません。
しかし、そもそも「DXを他人ごと」と捉える社員に、座学でDXの必要性をいくら説いても効果は限られます。むしろ、身近な所で見本となり、「自分なりにDX化に挑戦しててみようか…」と思った時に近くで気軽にサポートが受けられる体制を整え、成功体験を実感した社員を組織的に増やす事ができる環境こそが、DXを『自分ごと化』する意識の醸成と浸透には欠かせません。
従って、社内各部署で最初に養成するデジタル人材は極めて重要です。所属部門のファーストペンギンとなって、デジタル技術を利用した業務DX化を間近で見せ、関心を持ち始めた社員の実践トライを身近にサポートする『デジタル技術活用の伝道師』としての役割が求められます。
DXリスクのコントロール
デジタル技術では、従来型システムと同様にセキュリティ・リスクに対して注意を払う必要があります。また、多くの場合、セキュリティ対策は社内のIT部門が専門的に全体を統括しています。従って、社内各部署のデジタル人材は、IT部門としっかり連携を取りつつ、セキュリティ・ポリシーに準拠しながらデジタル技術の導入を進める必要があります。
加えて、社内各部署が業務DX化で活用するデジタル技術には、野良化リスクや利用サービスの停止リスク、ブラックボックス化のリスクなど、自部門で主体的に注意を払う必要があるリスクがあります。
- 野良化リスク
時間の経過とともに、管理者が不明になり、誰も管理しなくなる放置リスク。稼働の有無だけでなく、「何をしているのか…」すら分からない状態に陥る事があります。 - 利用サービスの乱立リスク(部分最適化)
事業部門が各々でデジタル技術を選定・契約し、類似するクラウド・サービスや機能が社内に乱立するリスク。なお、利用サービスの乱立が招く代表的な弊害には…- 全社のIT費用の増加
- 業務データの分散・孤立化
- サービスや機能由来のノウハウや知見の共有効果の希薄化、などが挙げられます。
※2や3は、DX化の全社的な促進や分析AIの導入時にボトルネックになります。
特に、事業部門がクラウドサービスを契約する際に、支払手数料等の勘定科目を適用して部門予算で費用計上している企業では、IT部門による契約前の統制を担保する仕組みがないと、こうした事態に陥りがちです。
- 利用サービスの停止リスク
特に、米国系のクラウドサービス提供事業者などは、サービスの提供中止などを躊躇なく経営判断する傾向にあります。しかし一方で、米国系クラウドサービスは、革新的な機能をいち早くサービスに取り入れる為、一概に米国系クラウドサービスを避ける訳にはいかないのが実情です。 - ブラックボックス化リスク
導入した業務DXの仕様や設計が分からなくなってしまい、開発した担当者以外は改修や機能変更ができなくなるリスク。折角、仕様書などを作成していても、必要な情報が網羅できていないケースも散見されます。導入を担当したデジタル人材が部署内に在籍している間は問題になりませんが、人事異動や退職などがあった後は、途端に問題が顕在化します。
事業部門のデジタル人材は、デジタル技術を使った新しいモノづくりだけに積極的に取組むのではなく、こうしたリスクの重要性を理解した上で、リスク低減につながる対応(以下に代表例を列挙)にも確実に取り組む必要があります。
- 仕様書や設計書などの適切な作成と共有、保全
- IT部門や関係部門との連携と情報共有
- デジタル技術の提供ベンダーが発信する情報の定期的なチェック、など
【社内のデジタル人材のサポート体制の役割】
社内各部署のデジタル人材の役割は、いずれも「各自が独力で頑張れ…」と丸投げできる役割ではありません。社内各部署のデジタル人材を組織的に支えるべく、会社としてサポート体制を整える必要があります。そこで、本章の最後にデジタル人材のサポート体制に求められる役割と代表的な業務内容を以下にまとめます。
デジタル人材の養成機関としての役割
主な業務内容
- 教材の準備
- 対象者の募集・選抜と教育
- 社内認定制度の導入
- 受講後に取り組むOJTプロジェクトのサポート
情報と知見の流通ハブとしての役割
主な業務内容
- 社内各部署の取組み事例の共有、成果が上がった取組みの表彰
- Q&A事例などの蓄積と助言
- 社内のデジタル人材がタイムリーに情報共有できるプラットフォームの構築
- 他社事例など外部情報の収集と共有
- クラウドサービス提供事業者等から発信されるベンダー情報の収集と各利用部署への共有
経営戦略と各部署のDX活動の橋渡しの役割
主な業務内容
- 各部署が取組む業務DX化の方向性とレベル感の統一
各部署が設定した取組みテーマを、より大きなイノベーションが見込める1つのテーマに統合する場合もある - 各部署の業務DX化の進展状況のモニタリングと経営層への報告
- 各部署が導入を検討するデジタル技術やサービスに対する全体最適視点での助言や検証
- 成果が上がった取組みの表彰
リスク対策の統括と統制環境の整備部門としての役割
(主な業務内容)
- 記録して保全すべき仕様書や設計書などの標準様式の規定
- 社内各部署で利用しているデジタル技術やサービスの定期的な棚卸
- 導入候補の新しいデジタル技術やサービスに対するリスク評価と導入可否判定
- クラウドサービスなどの更新契約の妥当性の検証
これらの役割を既存のIT部門が担うのか、既存のIT部門から独立した組織が担うのか、一部を委員会方式とするのか…は正直、各社ごとに判断が分かれます。しかし、これらの役割に伴う責任の所在を明確化し、責任に見合う職務権限を付与し、加えて必要な人材を配置する事は適切なDX環境を整える上で欠かせない、といえます。