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システム整備だけでは実現できない!営業改革のポイント(後編)(クリックして開く)

本レポートは、著者が講演したセミナー講演内容等を元に作成しています。
また、前編・中編からの続きとなっています。

アジェンダ

前編~中編の要約

  1. 営業強化を経営課題と位置づけつつ、成果を上げられずにいる企業が多い。
  2. こうした企業の多くでは、「営業が“職人”と変わらない扱い」になり、成果(契約)は厳しく管理していても、プロセスは個人任せになっている事が挙げられる。
  3. こうした状況を改善するには、以下に沿った取り組みが欠かせない。
    I.社内の出来る営業担当者の行動プロセスを対象に
    II.自社の営業の“勝ちパターン”(標準プロセス)をモデル化し、
    III.パフォーマンスの上がらない営業担当者の行動に適用できる様にする。
  4. この際、社内の営業担当者のうち、「中の上」をターゲットにモデル化を進める事が成功のカギといえる。
  5. さらに、対お客様のプロセスに加えて、対社内、情報アクセスの側面でもモデル化を進める。
  6. 最後に、各営業ステップの要件をきめ細かく設定する事が重要。無理に、HOW TOまでモデル化する必要はない。

本レポートは、前編・中編の続編として、モデル化した「勝ちパターン」を社内に浸透・定着させる為のポイントに焦点をあてて解説します。

6.浸透・定着化の課題

例えば、折角SFA(セールスフォース等)を導入したにも関わらず、
営業担当者にとっては「ただの煩わしい営業日報システム」になってしまっているケースが少なくありません。

営業の勝ちパターンの浸透・定着化を図る際にも同じ事がいえます。
折角、苦労して作成(モデル化)した「営業の勝ちパターン」も、
現場の営業担当者から「また、新しい事をやらされる」といった反感を買っては意味がありません。

モデル化した「営業の勝ちパターン」がSFAと同じ轍を踏まぬ様、現場の営業担当者への浸透と定着化を進めるには、
モデル化の検討以上に慎重に、かつ戦略的に取り組む事が重要です。

その為には、先ず「現場の営業担当者の業務実態」を正確に把握する必要があります。
以下は、こうした業務実態を把握する為に某企業で活動状況を調査した結果です。

この調査結果からも明らかな通り、そもそも、営業担当者は業務時間内の多くを外回りしています。(この傾向は新規顧客担当の場合、特に顕著です。)

また、社内業務の中には、顧客に提出する資料の作成等に加えて、
上司や関係部署への連絡や相談、会議用の報告資料の作成、社内外に分散している参考情報の検索・確認が大きな割合を占めています。

この様な状況では、本社が勝ちパターンに沿った営業活動の徹底を促すだけでは、思う様な成果は上がりません。
むしろ、現場の営業担当者の状況を理解し、動機付ける事が重要です。

その為には、以下の3カ条がポイントだと、当社は考えています。

【浸透・定着化の3カ条】

  1. 現場の営業担当者に、勝ちパターンの内容を理解して貰う事
  2. 営業担当者の仕事(特に社内業務)が、二度手間にならない事
  3. 現場の営業担当者が、勝ちパターンに沿って営業活動を行うメリットを実感する事

上記のうち、1は主に現場向けの説明会を繰り返す事で、一定の効果が期待できます。

しかし、2~3は、説明会では対応できません。
そこで、次章以降に記載するポイントを踏まえた取り組みが重要になってきます。

7.現場で「二度手間」にならない様にするには…

先述の通り、多くの営業担当者は、
上司や関係部署への案件の状況説明、会議での報告資料の作成など、社内コミュニケーションに多くの労力を費やしています。
(前章の例示では、既存顧客の担当営業は特に、こうした傾向が顕著です。)

この点については、SFA導入時に既に認識している企業が多く、殆どの企業で、SFAが備えるコミュニケーション機能を使って解決を試みています。

しかし、残念ながら、成果に乏しいケースが少なくありません。

なぜ、SFAを導入しても、報告や連絡の負荷を減らせないのか…

それは「いつ、誰に、何を報告(連絡)すれば良いか」がルール化されず、
報告の中身(具体的な報告事項)は各々の現場や担当者任せになっているからに他なりません。

SFAを使って報告する中身が現場や担当者任せになってしまった結果、

「いつ、誰と面談して、主にどんなテーマの話をしたのか…」(つまり、営業日報と変わらない内容)しかSFAには登録されず、
案件の具体的な情報はSFAとは別に社内メールを使って上司や関係部門に報告・連絡されている…

SFAを導入しても、報告や連絡の負荷が減っていない企業では、この様な状況に陥っているケースが散見されます。

更に、SFAや社内メール等の複数の報告(連絡)手段が併存した結果、次の図に記載した運用が行われ、
結果的に日常の報告とは別に、会議用の資料作成や参考情報を探す為に多くの労力を要してしまう…こうした弊害をしばしば、招いています。

この様な状況に陥らない様にするには、SFAそのものではなく、運用に着目する必要があります。

具体的には、モデル化した営業の勝ちパターンを活かしつつ、会議の運営方法や情報の保管ルールを包括的に見直すなどの取り組みが求められます。

現場の二度手間を解消しつつ、モデル化した営業の勝ちパターンの浸透・定着化を図る上で、SFAは有効なツールです。

しかし、単にSFAを導入しただけでは、営業改革の成果は上がりません。
むしろ、営業の勝ちパターンをモデル化し、合わせて営業会議等の運営ルールや営業情報の保管ルールを見直す『運用面』にこそ、営業改革の成否を分けるポイントがあります。

8.現場が、取り組みのメリットを実感するには…

次に、現場が営業モデリング改革のメリットを実感し、勝ちパターンの全社的な浸透・定着化を図る為のポイントをまとめます。

そもそも、営業モデリング改革の成果を誰もが納得できる形にするには、机上の説明だけでは不十分です。
また、多くの企業では、こうした取り組みに対して、前向きな(積極的な)マネージャーと否定的な(懐疑的な)マネージャーが共にいます。
しかも、最初に作成した勝ちパターンには、まだ、検証とブラッシュアップが必要なケースも少なくありません。

こうした状況に対処するには、パイロット導入(部分的な先行導入)を経て、全社展開につなげる「2段階アプローチ」(パイロット形式の導入)が有効です。
先ず、取り組みに前向きなマネージャーと共同して先行運用を始め、その中で勝ちパターンの検証とブラッシュアップを図りつつ、否定的な(懐疑的な)マネージャーが納得できる実例の蓄積を図るアプローチです。

しかし、勝ちパターンをモデル化した後で、いきなりパイロット導入の協力を要請する為に前向きなマネージャーを探しても、協力者は現れません。

従って、勝ちパターンのモデル化を検討し始める初期段階から、
前向きな姿勢が見込めそうなマネージャーを探して検討体制に加えていく長期的な展望にたったプロジェクト体制を編成する事が肝要です。
その上で、パイロット導入フェーズで以下を“やり通す”事が、パイロット部門が実感でき、パイロット対象外の部門が納得できる「自社の成果」を示す事につながります。

9.最後に…

これまでも繰り返してきましたが、営業モデリング改革には大小さまざまな成果(メリット)があります。

代表的な成果は、次の通りです。

【営業モデリング改革の主な成果】

  • 個々の案件の営業プロセスを管理できる
  • 営業会議を活性化できる
  • 上記の相乗効果により、各現場のチーム営業力が向上する

更に、最も注目すべきメリットは

パフォーマンスが上がらなかった営業担当者の底上げを図る事ができる

これらの成果は、単にSFAやCRM等の情報システムを導入するだけでは実現できません。

むしろ、実際の営業活動や報告・会議の運営方法など、営業部門の活動そのものを見直す事が不可欠です。
その点で、営業活動そのものに着眼した「営業モデリング改革」は、営業改革において非常に有効な取り組み、と当社は考えています。

未だ、ご紹介できていないポイントも少なくありませんが、紙面の関係もあり、本レポートは以上で終わりとさせて頂きます。

最後まで、ご拝読いただき、有難うございました。

CIOパートナーズ株式会社
代表取締役 吉田明弘