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クラウド・サービスを活かした業務改革のポイント(後編)(クリックして開く)

「クラウド・サービスを活かした業務改革のポイント」(前編)は、以下をクリックして下さい。

アジェンダ

ITビジョンの成熟に向けて

前編でも解説した通り、これからのクラウド時代は、
新しい技術・ソリューションを積極的に取り入れてITを活かしたイノベーションを進める企業と、
ITに対する位置づけをレベルアップしきれず、ITを活用したイノベーションを進める事が出来ない企業の二極化が更に進むと考えられます。
(当社はこれを“IT格差の拡大”と呼んでいます。)

こうしたIT格差の拡大が進む中にあって、ITを活用してイノベーションを進める企業となるには先ず、
各々の企業で自社のITビジョン(企業がITに何を期待し、ITを何の為のツール(経営資源)と位置付けているのか)を再検討し、
適切に設定する事から始める必要があります。

IT経営力の成熟度モデル

下の図表(5)は、CIOパートナーズがITビジョン検討の道標と位置付ける「IT経営力の成熟度」をモデル化したものです。

IT経営力が成熟していない企業(図表4の第1・2ステージにあたる全体の約65%の企業)の多くは、「ITを業務の効率化を進める為の道具」と位置付けています。

こうした企業では、再構築などのIT投資を機に、業務の効率化(簡素化や自動化)に懸命に取組んでいます。

但し、効率化が既に一巡している企業も多くこうした企業では、
再構築等に伴う新たな投資に見合うリターンを得難くなっているケースも散見され、その事で苦しんでいる企業も少なくありません。

次に、ITを主に管理強化のツールと位置付ける状態(図表4の主に第3ステージにあたる企業)があります。

具体的には、マネジメント情報の充実を図り社内の意思決定の質やスピードを高める、
業績等の管理・評価の情報を充実させ、社内の意識改革(例:利益マインドの浸透など)を図る、等に取組む事例が挙げられます。

但し、こうした取組みは、一般的に間接的な効果は極めて大きいものの、メリットに対するコミットメントが曖昧になりがちで、
ITビジョンが未成熟な企業では効率化を目指した取組みと抱き合わせで、副次的な位置づけに留まる事が少なくありません。

更に、IT経営力が最も成熟している状態(レベル3)にあり、ITを利活用して事業の差別化を積極的に図る企業群があります。

こうした企業は自社に留まらず、サプライチェーン全体を視野にITを使って業務(ビジネス)の最適化を図る事を常に指向しています。

また、結果的に調達先や顧客(企業)・消費者との接点が密になる事で、
更に強固な取引関係の確立や、情報共有を通じた一層の差別化の推進など、事業活動に直結する総合的なメリットを期待できます。

企業のシステム部門が受け身で待っていても、ITビジョンの成熟を促す事は出来ません。

むしろ、

システム部門が主体となり、
経営者に対してITビジョンを積極的・能動的に提案し続ける

事が、ITマネジメントの強化に向けた第一歩といえます。

クラウド時代のIT投資の方向性

次に、これからのクラウド時代における企業のIT投資(IT整備)の方向性をまとめます。

筆者がこれまで支援してきた企業でも、ITのメタボリック化が深刻なケースが多く存在します。

これは、主に社内のユーザー部門の要望に汲まなく対応してきた事に起因し、

企業内でシステム部門の“立場”が相対的に弱かった
個々の業務(要望)の定量的な評価を踏まえた選別・対応に取組んでこなかった

などが背景にあります。

ただ、ITがメタボ化した状態では、業務改革やイノベーションに向けてIT整備に取り組もうにも、
複雑化した既存システムがボトルネックとなり、効率的なコストパフォーマンス(投資対効果)を期待できません。

コストパフォーマンスの効率化を阻害する主な要因

  1. ベンダーの事実上の固定化(選択肢の除外)
    • 特に管理強化を目指す上で、基礎データの生成元にあたる既存システムが複雑化した状態では、整備過程で思わぬ制約が生じる懸念があり、既存システムの担当ベンダーに発注先が事実上、固定化されてしまう恐れがある。こうした場合、見積り額に競争原理が働かず、投資額が割高になる懸念が生じる。
  2. 要件の膨張と実効性の低下(メタボな管理システムに…)
    • メタボ化の原因といえる「IT(機能)より、業務・要望を優先する」考え方が経営者や社内(ユーザー部門)に蔓延した情報リテラシーが低い状態では、管理強化を狙った新たなIT整備に対しても、部分最適の管理ニーズ(要望)ばかりがあがり、要件の膨張を招くばかりか、本来、意識改革や経営管理の高度化に向けて、全体最適の視点で検討の上、実装すべき要件や機能がないがしろになる可能性があります。

無論、既に大きな負担となっているITコストをそのままに、
更に多額のコスト(投資)を費やす事が経営上、許されざる判断だという事は言うまでもありません。

従って、

既存システムのスリム化こそが、
業務改革やイノベーションの推進に向けた、第1ステップ

といえます。

最後に…

最後に現在、経営層からITコストの削減指示を受けて、
システム部門自らが自社システムの改訂・改修・バグ対応に取組む企業も未だに少なくありません。

この様な場合、システム部門内の業務効率をより高める為、
限られた人員で部内の分業化(専門化)を更に進め、結果的に属人化を招くと共に、

人事交流の硬直化(ひいてはシステム部門の孤立化)
全体を見渡して戦略的に動ける人材の不在、等

といったITマネジメント上の弊害を抱えるケースも多く見受けられます。

片や、クラウド・サービスは、従来のパッケージや個別開発されたシステムと異なり、
低コストで導入が可能なものの、自社に合わせたカスタマイズには限りがあり、
「IT(機能)に業務を合わせる」導入姿勢が前提といえます。

(とはいえ、“それなりに”機能が充実したサービスでないと「顧客企業のITに業務を合わせる姿勢」に甘え過ぎたサービスも、今後は当然、淘汰が進むと予想されます。)

従って、クラウド・サービスを戦略的に取り入れ、

メタボリック化したITのスリム化と図りつつ
取組みを通じてITマネジメント体制の強化

これらを図る事こそが、クラウド・サービスを活かした業務改革を実現する為に企業が採るべき現実的な選択肢だといえます。

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CIOパートナーズ株式会社
代表取締役 吉田明弘